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第5回学校図書館研修会」を6月25日(土)に開催し、40名以上の方にご参加いただきました。
今回は、実行委員会メンバーのSさんの報告を掲載します。
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科学の本の魅力を子ども達に―6月25日(土)第5回学校図書館研修会の報告―
今回は,前半に京都科学読み物研究会の島崎真紀子氏に「科学の本に親しむポイントとそのための選書」という内容でご講演いただき,後半に参加者の交流の時間を設けました。京都市内や府下のみならず大阪府や奈良県,滋賀県からなど総勢40名を超える参加者の方々が科学の本の面白さを再認識し学校図書館現場の率直な悩みを出し合う機会となったのではないでしょうか。初めに挨拶した岡本みさきさんが述べたように「学校図書館を考える会・近畿」が閉会し,『ぱっちわーく』の休止が伝えられる今,私たち「京都の学校図書館・公共図書館の充実を求めるつどい」実行委員会が担う役目の重要性を改めて心に刻んだことでした。以下に講演内容と交流会で出された意見の概要をお伝えします。
島崎氏はまず『桜の咲くころホタルはどこに?』としてブックトーク式にホタルの本を紹介。その一番に2016年出版の読み聞かせ写真絵本『うまれたよ!ホタル』中瀬潤写真・文は,2009年出版の『ホタル』日高敏孝総合監修 栗林慧写真など多くの本がホタルの成虫が光り輝く現象から導入しているとは異なり,ホタルの卵がどのように成長するかという導入である点に着目,水中で育った幼虫が春になっていったん土手をのぼって土の中に潜り,さなぎから成虫になって再び地上に出てくる現象が不思議だったと話されたが,これは私も全く知らないことだった。
幼児の読み聞かせ用に使えるかがくのともの『ほたる』神沢利子文 栗林慧写真から,小学生低学年向きの新版かんさつシリーズ『ホタルの一生』佐々木崑文 勝野重美写真,ヘイケボタルについて詳しい『ホタル 田んぼのいきものたち』大場信義 文写真,学校の先生が子ども達と一緒にホタルを育てた記録『ホタルの歌』,伝記『ゲンジボタルと生きる ホタル研究に命を燃やした南喜市郎』国松俊英作,専門家が細かい図を多くあげながらきちんと説明している『ホタルが教えてくれたこと わたしの昆虫記2』矢島稔著など,取り上げていただいた本のすべてを紹介できないのがもどかしい限りだが,司会者の発言にもあったように,どれも同じように見えたホタルの本が,説明を聞いた後はそれぞれの異なった視点や表現を知ることで,1冊1冊が全く違う本に見えたのだった。
京都科学読み物研究会で引き継がれている「科学読み物に親しむ」ことの意義を述べられ,さらに科学読み物の種類を様々なタイプのタンポポの本を例にとって紹介された。近年出された『わたしのタンポポ研究』保谷彰彦著やしぜんのひみつ写真館1『ぜんぶわかる!タンポポ』岩間史郎著では,タンポポの在来種,外来種の違い、そして雑種についてよく知ることができる点を指摘。しかし古い本の中にも『たんぽぽさいた』小川潔文 加藤新絵や『花と実のなぞ いたずらはかせのかがくの本10』板倉聖宜著のようなお勧めの本があるとのこと。
科学の本に親しむポイントとしては,何といっても○本を読む事だけでなく観察実験という体験を行ったり来たりすること。まさに「本から自然へ,自然から本へ」○1冊の本ですべてをわかろうとすることは無理。比べ読みをしてこそわかることや立ち上がってくるものがあり,ぜひ実践してほしい。○わかるところだけをひろい読みしてもよい。○科学の本への架け橋になるお話としてどんな本があるか。○やさしい本か詳しい本からか読む順番によって感じ方が違う点に留意すること。
選書のポイントとしては●子どもにこれを伝えたいという熱意が感じられる本。●観察・実験・研究の実践者による本,またはその実践を的確に伝える著者による本。●言葉の定義が丁寧。●実物のサイズや倍率を示している。●写真より図が分かりやすい場合もある。●観察・実験に誘っている。●過度な擬人化は混乱を招く。●内容と関係の薄い挿絵やキャラクターは要らない。●進化の道筋や生態系の中の位置づけなど大きな視点が入っている。●翻訳本には子どもが実際に確かめるように促したり,切り口がユニークという傾向がある一方、対象のいきものが身近でないこともある。●●新しい本には,写真の鮮明さ・美しさ,新しい知見に加え、読み聞かせを意識しているなどの傾向がある●古い本にもよいものがある。
以上をその事例となる本を提示しながら説明してくださった。島崎氏はその日は次のブックトークも控えておられる忙しさの中,50冊以上の本を会場に持ち込んでの熱のこもる講演で,参加者の中には早速京都科学読み物研究会に連絡を取られた方があったと聞いている。
講演後に行われた交流会では
・自然科学の本を借りていく子が少ない中学生にどのように進めるか,
・学校司書への保護者としての希望
・小学生でも文学が嫌い,文字が嫌い,小さい字は嫌だけど,科学ものなら好きという児童への対応について
・調べ学習用本のセットものの問題点
・百科事典の購入について
・京都市の学校司書の研修予定や内容,連絡会の有無
・公共図書館との連携やそれに関わる学校司書の役目
・学校司書の勤務形態や勤務条件
・科学読み物のリストになる出版物と京都科学読み物研究会へのお誘い
・文科省の動きや,日本図書館協会「学校図書館職員問題検討会の最終報告までの意見募集
・放課後の学校図書館の開放について
等の意見が出され,今後取り組むべき課題の整理も必要と思われた。(S)
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京都家庭文庫地域文庫連絡会の会報『京庫連だより』2016年7月号に掲載のものと同じ報告です。
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