龍谷大学大宮学舎にて
<内容>
●講演「外国の図書館・学校図書館事情とそこから見えてくるもの」獨協大学 井上靖代氏
●レポート
1.「小学校の図書室事情」福知山教組OG・水谷直美氏
2.「図書ボランティア実践報告」宇治市立北小倉小学校図書ボランティア・中嶋馨氏
3.「京都府下の小・中学校図書館への人の配置について」京都府高学職部司書委員会・村松常葉氏
4.「司書がいると図書館は楽しいー図書館行事・展示をふりかえってー」京都府立園部高校司書・小泉真理氏
5.「子ども読書年から10年―京都府内公共図書館の動向―」府職労教育支部/京都府立図書館・是住久美子氏
京都教研特別分科会というかたちで開催、参加者33名でした。
<報告>
井上先生の講演は、豊富なデータをもとに、日本/海外の図書館と子どもの「読書」の現状や、海外の学校/学校図書館と公共図書館のコラボレーションの例などを示しながら、読書教育と司書の専門性についても考えさせられる興味深いものでした。多岐に渡る内容の中でも印象的だったのは次のような「語録」です。
*読書は「読・書」reading&writing
→「読むこと=理解受容」&「書くこと=伝達表現」
*「生きる力」とは何か?→「なんでやねん」「ほんまか?」
…書いてあることにつっこむ(「なんでや? 言うてみい!」を繰り返す)のが「調べ学習」
*本を読ませるのが最終目標ではない。答えのないものを模索して結論を出す力が必要。
*学校図書館に人がいて、「何」をするのか? そこが大切。教育にどれだけ反映させられるか、数値的に見せなくては納得させられない。学力調査の結果も戦略としてうまく使って、「図書館の充実と学力には相関がある」と、行政が聞きたいことを言ってあげる。
*資料費も人も請求しないとつかない。獲得努力をどれだけしたか。目標は大きく言い続けるべき。etc…
とてもパワフルで示唆に富んだ講演でした。
1.「小学校の図書室事情」
司書教諭発令後も特別支援コーディネーター兼学級担任を担当されて、軽減がないため仕事量は膨大になり、土日に出勤して何とか処理していたという状況の報告でした。
2.「図書ボランティア実践報告」
6年間のボランティア活動の中で、あらゆる手をつくして奮闘され、蔵書調査・データベース化・ボランティアの組織化を行ってこられた実践報告。その経験を踏まえた上での「図書館が授業作りに関わるには、学校司書の増員(宇治市では現在司書が複数校かけもちで巡回)が必要。図書館の飾りや配架、本の処理はボランティアでも出来るが、授業支援は司書でないと出来ない」との言葉には説得力があり、井上先生の講演内容とも直接繋がるものでした。
3.「京都府下の小・中学校図書館への人の配置について」
府下23自治体に対して行ったアンケート調査の結果報告。15自治体で何らかの「人」の配置があること、ただし1校1人フルタイム勤務はまれで、約半数は緊急雇用対策事業のため、事業終了後の配置は未定という現状でした。
4.「司書がいると図書館は楽しいー図書館行事・展示をふりかえってー」
高校図書館で取り組んでこられた行事や展示の紹介に加えて、そうした活動の持つ意義、どのような展望を持って継続していくかについて報告されました。
5.「子ども読書年から10年―京都府内公共図書館の動向―」
この10年、子どもの「読書」をめぐる動きは活発化しているが、職員も予算も増えない「逆境」の中、様々なサービス展開が求められている、との報告でした。
参加者アンケートは、「京都の実情がよくわかった」「学校図書館の現状と方向性がわかった」「本音が聞ける非常にありがたい機会だった」と好評でした。